Guildを代表するモデル=S-100の遺伝子を現代に受け継ぐPolara Deluxe。コイルタップによってシングルコイルとハムバッカーを切り替えられるピックアップを搭載しており、表情豊かなサウンドメイクを楽しむことができる1本だ。今回、2024年までALIのギタリストとして活躍したAiichiro Césarを試奏者に迎え、Polara Deluxeの魅力を語ってもらった。
1970年代のGuildを象徴する代表機種のS-100を現代的にアップデートしたPolaraシリーズ。Polara Deluxeは、Guild伝統のチェスターフィールド・インレイをヘッドに冠した上位モデルで、主なウッドマテリアルはマホガニー・ボディ&マホガニー・ネック、ローズウッド指板となっている。最大の特徴はGuild HB-2+ピックアップのコイル・スプリット機能で、シングルコイルとハムバッカーのサウンドを切り替えることが可能。 リアH、リアS、HS、HH、SS、SH、フロントS、フロントHという8パターンの中から好きな組み合わせを選択できる。
Aiichiro César
1996年生まれ、神戸市出身。日本人の父とブラジル人の母の間に生まれる。2020年にファンク、ソウル、ジャズ、ラテンミュージック、ヒップホップなどの要素を取り入れたサウンド・スタイルで人気を博するALIにギタリストとして参加し、世界を股にかけた活動を展開。2024年にALIを脱退した後は、さまざまなミュージシャンのサポート・ワークを始め、多岐に活躍する。
──まずはPolara Deluxeを手にした時の第一印象について教えてください。
僕が使用するギターを選ぶ時に大切にしているポイントは、“見た目”と“音”なんです。Polara Deluxeの見た目に関しては、ビザール・ギターのような個性的な見た目とモダンな雰囲気のカッコよさが絶妙なバランスで溶け合っていて、この独特なデザインとカラーリングが自分にバッチリとハマると感じました。
ギター本体の仕様面にも好きなところがたくさんあって……まずオープンバック仕様のペグなんですけど、ゴールド・パーツにブランド・ロゴが刻印されていて、すごくカッコいいんですよ。インレイやバインディングなどもデラックス感があって好きです。そういったさりげないゴージャス感がめっちゃオシャレですよね。そのほかにもブランドのマークが入ったコントロール・ツマミとか……そういう細かい部分にこだわりのポイントを発見するとグッときちゃいます(笑)。音に関しては、いかに美しいクリーン・トーンを出せるかという点を重要視しているんですけど、Polara Deluxeのクリーンはとても素晴らしかったです。少し歪ませたクランチやヘヴィなディストーション・サウンドもカッコよく鳴ってくれるので、弾いていてとても楽しいですね。
──さまざまなカラー・ラインナップの中からキャニオン・ダスクを選んだ理由は?
最終的にキャニオン・ダスクとチェリー・レッドでどちらにしようか迷ったんですけど……ほかのギター・メーカーにはない色ということで、思い切ってキャニオン・ダスクを選びました。
──ギターの演奏性において重要な“ネックの握り心地”に関してはいかがですか?
グリップ感はやや薄めのCシェイプで、すごく弾きやすいです。僕は、ほかの人に比べて手が小さいんですけど、ネックを握った時にめちゃくちゃフィットしたんですよ。なのでワイド・ストレッチを使ったテンション・コードもストレスなく押さえることができましたね。
──ではギターを抱えてみた時の印象は?
まずはめちゃくちゃ“軽い”ことに驚きました。加えて、立って弾いていても“ヘッド落ちしない”というのも大きなポイントでしたね。以前、同じようなシェイプのギターを使っていた時には、ヘッド落ちにすごく悩まされたので、すごく快適に演奏できるのがうれしいです。Polara Deluxeを弾いていると、自宅でデモを作る時なんかに長い時間プレイしていても全然疲れたりしないし、体のどこかが痛くなったりすることも全然ありませんね。
──Polara Deluxeは、コイル・スプリット機能によって8種類ものピックアップ・サウンドを使い分けられるのも大きな特徴です。Césarさんの好きな組み合わせについて教えて下さい。
デモの演奏動画でも使ったんですが、シングルコイルのリア・ピックアップを深く歪ませたサウンドはすごく好きでした。 あと、ハムバッカーのフロント・ピックアップで作る甘いクリーン・サウンドも素晴らしかったですね。しかもクリーンに関しては、リッチなサウンドだけでなく、ビザール感のあるペラペラな音も作れるんですよ。楽曲によっては、そういうペラペラな音のほうがハマる場面もあったりしますから。
そのほかの細かい部分だと、例えば“シングルコイル(リア)+フロント(ハムバッカー)”というミックス・ポジションは、コードの響きにキラッとした成分を加えてくれるので、バンド・アンサンブルの中でも埋もれないような音を作ることができると思います。Polara Deluxeはピックアップの組み合わせによって多彩な音作りを楽しむことができるので、これまでに出会ったことのないような新しい音や、プレイヤーの好きな音を必ず見つけられるような気がしました。個人的には、バンド・アンサンブルの中で自分が鳴らすギターのポジションを探している時に、ギターの本体側で微調整をしながら音を作り込んでいけるのは、ものすごく便利で使いやすいと思います。
──今回の動画のために書き下ろしたデモ音源について話を聞かせてください。楽曲は、どのように作り込んでいったのですか?
Polara Deluxeをイメージしたデモを作らせていただきました。狙った意図としては、このギターだからこそ表現できる“振り幅の広さ”を音で伝えたいと思っていて……クリーンからヘヴィな歪みまで、両極端な音を使い分けてみようと考えていたんです。なので、まずはハムバッカーのフロント・ピックアップで作ったクリーンから始まって、次にシングルコイルのリア・ピックアップを使ったハイゲイン・ディストーションへとなだれ込むような展開から全体を作り込んでいきました。
個人的に、歪ませた時のサウンドとギターの相性がすごく良いと感じましたね。かなりヘヴィに歪ませたんですけど、リフを弾いた時にコードの輪郭が潰れずに残ってくれました。ここまで強く歪ませてしまうと、コードの響きをしっかりと再生してくれないようなギターもあると思うんですけど、Polara Deluxeはすごく音作りがしやすかったです。今回のデモを録る時にドロップ・チューニングも試してみたんですが安定して使うことができました。音作りの面もそうですが、自分が表現したいアクションに対して、ギターがしっかりと応えてくれるモデルだと思います。
──改めて、Guildブランドに対する印象を教えて下さい。
もともとGuildのことは、T-BirdやS-100、セミアコのStarfireなど、ほかのメーカーにはない独特なデザインのモデルがたくさんランナップされていて、ずっと気になっていたんです。
実際にPolara Deluxeを弾くようになって気付いたことは、“職人気質なんだけど遊び心も忘れていないブランド”だということ。Guildのように、個性的な見た目と良い音を両立しているブランドってなかなかないと思うんですよ。僕はビザール・ギターが好きなんですけど、音楽制作の現場で使うにはチューニングの安定性や音の面で不安があったりするのですが、Guildのギターの音には、聞き手を黙らせるような説得力が宿っていると思います。エレキもアコギもプレミアムなギターという印象がありますね。最近ではPolara Deluxe以外のモデルのこともすごく気になり始めちゃって……気がつくとGuildのギターを探しちゃっているんですよ(笑)。それくらい僕の心を掴んで離さない魅力がありますね。
──Polara Deluxeは、どのようなプレイヤーにオススメですか?
やっぱり8種類のピックアップ・パターンを選べるのは、ほかのギターにはない大きな魅力ですよね。クリーンから歪みまで対応してくれるので、弾き手の表現したいプレイにしっかりと追従してくれると思います。ギタリストは出音に導かれてフレーズが変わることが多いと思うんですけど、このPolara Deluxeを手にしているだけで自然といろんなフレーズを“弾かされてしまう”。それくらい自分の中から湧き出てくるイメージを具現化してくれるギターですね。
なので、まず見た目が気に入ったのであれば、やりたい音楽ジャンルや作ってみたいギター・サウンドはあとからついてくるようなポテンシャルを持っていると思います。ビギナーが手にする最初のギターとしては申し分のない実力を持っている大当たりのモデルだし、すでにメイン・ギターが決まっているような人にとっても便利に使える2本目のサブ・ギターとしていろんな場面で活躍してくれるんじゃないでしょうか。しかも、リーズナブルな価格帯というのもうれしいですよね。だってシングルコイルとハムバッカーという2本分のギター・サウンドに加えて、“シングルコイル+ハムバッカー”の音まで出せてしまう……いろんな音で演奏できる楽しさと実用性を兼ね備えた1本だと思います。
場所=Yamaha Sound Crossing Shibuya
取材=尾藤雅哉(BITTERS)
動画撮影・編集、写真=熊谷和樹、岩佐篤樹
録音・ミックス=嵩井翔平
Guitar : Aiichiro cesar
Bass : telyoshi
Beat : immaterial
Mixing : immaterial